問題のある従業員を解雇したい場合

従業員解雇の事前の準備:就業規則とその周知

 普通解雇、懲戒解雇ともに、解雇事由が就業規則(または採用時の労働契約)に定められていること、その就業規則が従業員に周知されていることが必要です。

 会社の代表者から「問題のある従業員を解雇したい」という相談を受けた際に、「就業規則に(解雇事由を)定めていなかった!」、「規則はあるが従業員に見せたことがない!」ということをよく耳にします。

 代表者は、「違法行為をした従業員だから、解雇は当然」と考えている方が大半ですが、そもそも就業規則がないと、解雇が無効になってしまいます。きちんと就業規則に解雇の事由を定め、従業員にも周知しておくことが肝心です。

実際の従業員解雇の手順

手順1.解雇の理由となる証拠を残す

 解雇した従業員から後で訴えられた場合、解雇の理由があることを証明できないと、解雇が無効となってしまう場合もあります。

     例えば、従業員が問題行動を繰り返し、再三の指導や忠告にもかかわらず、改めなかった、という理由で解雇する場合、

 口頭の忠告では証拠が残らず、後で従業員から、「指導や忠告を受けたことはない」などと言われてしまうおそれがあります。

 口頭ではなく、メールや書面で指導・忠告して、証拠を残すようにしましょう。

手順2.解雇予告または解雇予告手当を出す

 退職してもらいたい日の30日以上前に解雇の予告を行うか、即日辞めてもらいたい場合(即日解雇)は、30日分の給料(解雇予告手当)を支払う必要があります(労働基準法20条)。

 解雇予告手当を支払いたくない場合は、所轄の労働基準監督所長から、解雇予告除外認定を受ける必要があります。

 解雇予告除外認定の申請書を出せば、どんな場合でも認定がもらえるというわけではありません。職場内での窃盗や横領、経歴詐称など、従業員側にかなりひどい行為がある場合に限られます。

 通常は、解雇予告手当を払わずに即日解雇することはできません。

解雇が有効になる条件

 労働者の解雇は、業務命令や職務規律に違反するなどの問題があればできる場合もありますが、1回の問題で解雇が有効となることはほとんどありません。

 使用者側に問題がなかったのか、改善のための取り組みがなされたのか、労働者の行為の内容や程度、会社が被った損害の重大性、労働者の事情など、さまざまな事情が考慮されて判断されます。

解雇した後に訴えられないようにするためには

 上記の手続(就業規則、解雇予告又は解雇予告手当)をきっちり踏襲することは最低限、必要です。どんなに解雇の正当な理由があっても、これらの手続を行っていなければ、解雇は無効になってしまいます。

 また、手続をきちんと行っていたとしても、解雇の正当な理由がなければ、やはり解雇は無効となってしまいます。

解雇が無効となるとバックペイが発生

 解雇が無効となる場合、例えば、解雇後に訴えられ、解雇から1年後に裁判所が「解雇は無効」と認定した場合、会社は、遡って1年分の給料を支払わなければなりません(「バックペイ」と言います)。1年間全く働いていなかった従業員に対して、その間の給料を支払うことは、会社にとって大損害といえます。shigoto_sabori

 そこで、解雇が無効となるのを避けるため、従業員を説得して、自主的に退社してもらうという方法もあり、実際に有効です。代表者としては、「問題のある従業員を解雇しても当然だろう!」、「懲戒解雇で一泡吹かせたい!」、「なぜ退職金を支払わなければならないのか!」という考えに陥る傾向があります。

 しかし、後でバックペイを支払う羽目(しかも、訴訟になると手間をとられ、心理的にも負担)になるよりは、退職金を支払った方が経済的にも精神的にも負担が少なくて済んだ、ということは往々にしてあります。

なるべく早めに弁護士にご相談を

 したがって、解雇事由にあたるからといって慌てて解雇せず、「解雇で大丈夫なのか」、「自主退社がいいのか」、という点を一度冷静に検討し、慎重に判断を下す必要があります。検討する際に、弁護士に相談いただければ、より適切な判断が下せると思います。

 社員の解雇に関する弁護士相談なら、上大岡法律事務所にご相談ください。


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