労働訴訟(裁判)
労働訴訟(労働裁判)とは、企業とそこで働く労働者との間の紛争について、裁判所での訴訟手続を通じて解決しようとするものです。労働訴訟という特別の訴訟制度があるわけではありませんが、特に労働問題の訴訟について一般に労働訴訟と呼ばれています。
労働訴訟の管轄
労働訴訟の管轄は,民事訴訟の管轄と同じで,(1)被告の普通裁判籍,(2)事務所又は営業所の所在地,(3)義務履行地のいずれかになります。
会社を被告として訴える場合,(1)は会社の本社・本店の所在地,(2)は原告が働いていた営業所の所在地,(3)は賃金の支払いを求める訴訟や解雇無効を求める訴訟であれば,原告が働いていた営業所の所在地,退職金を求める訴訟であれば原告の住所が義務履行地となり,管轄が認められます。
(1)~(3)の基準によると複数の管轄が認められる場合,原告はその中から任意の管轄裁判所を選ぶことが可能です。
労働審判と労働訴訟の違い
労使間紛争の解決を目的とする手続(裁判)としては、労働訴訟のほかにも労働審判(労働審判についての詳細はこちら)があります。
労働審判は、手続が非公開で行われ、審理も原則として3回以内という短期間で終結します(労働審判法15条2項)。このため、労働審判は、外部に知られたくない事件や、早期解決の必要がある事件、事実関係に争いがない事件などに適した手続といえます。
これに対して、労働訴訟は、原則として公開の法廷で行われ、当事者双方に言い分を十分尽くさせ、証拠に基づいて厳密な事実認定が行われる手続です。
労働審判と比較して、労働訴訟は一般に時間がかかるため、事実関係に争いがある事件や、話し合いによる解決が困難な事件、当事者が被る不利益が甚大な事件などに適した手続といえます。
労働訴訟の類型
労働訴訟においては、
- ・解雇や雇止めされた従業員が地位の確認を求めるもの
- ・未払いの残業代や退職金の支払いを求めるもの
- ・労働条件の差別的取り扱いの是正を求めるもの
- ・配転命令や出向命令の効力を争うもの
- ・セクハラ・パワハラに対して損害賠償請求を求める
など、労使間の様々な紛争が審理の対象となります。
労働訴訟はどれぐらいの期間を要するのか?
労働審判であれば2~3か月です。
労働訴訟は事案によりけりですが、短くても1年前後、長ければ3年以上かかる場合もあります。 労働訴訟だと時間がかかりすぎるので、労働審判という制度ができました。
労働訴訟の流れ
労働訴訟は、次の流れで行われます。
(1) 訴状提出
労働訴訟は、原告が地方裁判所または簡易裁判所に訴状を提出することからスタートします。訴額が140万円を超える場合は地方裁判所になります。
裁判所に訴状が提出されると、裁判所は第1回口頭弁論期日を指定した上で、被告に訴状を送達します。被告への訴状送達により事件が裁判所に係属【けいぞく】します。係属とは、簡単に解説するならば、訴状が被告人に送達されて裁判が始まることです。
(2) 答弁書提出
訴状を受け取った被告は、第一回口頭弁論期日までに訴状記載の請求の趣旨や請求の原因に対する認否・反論を記載した答弁書を提出します。
(3) 口頭弁論
労働訴訟の第二回期日以降は、基本的には原告と被告が交互に、主張書面や証拠(書証)の提出を行います。期日はおおよそ1か月ごとに開かれます。
争点が複雑な事案では、口頭弁論だけではなく、非公開の別室で争点を整理する弁論準備が行われることもあります。
(4) 人証
主張や書証による立証が尽くされた後、場合によっては人証【にんしょう・じんしょう】(原告・被告の当事者や、証人の尋問)が行われることがあります。
(5) 和解
裁判所は、審理の過程で話し合いの余地がある場合、和解を試みることがあります。
和解が成立した場合、和解の内容を記した和解調書が作成されますが、同調書は確定判決と同一の効力を有します(民事訴訟法267条)。
(6) 判決
各当事者が十分に主張・立証を行い、和解の余地もなければ、裁判所は弁論を終結させ、判決という終局的な判断を下します。
判決までの期間は、事件ごとに異なりますが、複雑な事案や人証が行われるような事案では、訴状の提出から判決まで一年以上かかることもあります。
(7) 控訴・上告
判決内容に不服がある当事者は、第一審に対しては高等裁判所に控訴、第二審に対しては最高裁判所に上告をすることにより争うことができます。
労働訴訟の費用
一般的な労働訴訟では、民事訴訟と同じように、経済的利益によって、費用が決まりますが、条件などで大きく異なる場合があるので、お問い合わせください。
労働訴訟と弁護士
労働法は労働者の権利を守ることに重きを置いた法律ですので、労働者側の請求に対して企業の対応が遅れてしまうと、本来支払う必要のなかった費用が生じたり、裁判で負けてしまうだけでなく、企業イメージの低下を招いたりするといった大きな経営リスクを負うこととなります。
労働者から労働訴訟を起こされたら、企業は相手方の主張内容を精査するとともに、相手側との和解をすることを念頭に置いて訴訟を進めるべきか、あくまで判決を求めるべきかを判断しなければなりません。
経営者にとってどのような終わらせ方が最善の結果をもたらすのかについて、事実関係を整理・把握し、慎重に判断をしなければなりません。
しかし、例えば和解をするという判断をするにしても、訴訟が進行して企業側に不利な証拠が多く提出されてしまった後では、企業側に有利な条件で和解することは難しくなりますので、判断をするタイミングも重要になってきます。
これらの判断を間違いなく行うには、法的な専門知識が必要不可欠です。弁護士に依頼をすることで、訴訟の見通しや、和解になった場合の相場などを踏まえて、企業にとって最良の問題解決を図ることができます。
実際に労働訴訟を行う際にも、労働問題の経験豊富な弁護士であれば、依頼者のお悩みに対して親身に対応し、依頼者と話し合いをしながら、依頼者にとって少しでも有利になるような主張を組み立てることができます。
横浜市や川崎市、藤沢市、横須賀市で労働訴訟の弁護士相談なら、上大岡法律事務所にお任せください。
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