(相続)相続人の1人が父親の口座から多額の現金を引き出しており、その返還が認められた事案
1.当事者の関係
父親が死亡し、相続人は長女と二女という事案で、二女から依頼を受けた。
2.相談の経緯
父親が亡くなり、二女が父親名義の預金残高を調べたところ、生前に父から聞いていた額よりもだいぶ少ないから不審に思ったということであった。
3.弁護士の対応
まずは、父親の口座の取引履歴を取り寄せた。
すると、父親の死亡直前に、ATMから毎日、限度額いっぱいの額が引き出され、総額が1000万円以上にもなることが判明した。
同居していた長女が、父親が余命幾ばくもないと知って、次女に無断で引き出したものと思われた。
そこで、長女を相手として不当利得返還請求訴訟を起こした。
病院のカルテを取り寄せ、父親の口座から現金が引き出されたころは、父親は入院中であり、自分では銀行に行くことができない状態であったことを立証した。
また、毎日、限度額いっぱいの額の金額が引き出される態様が不自然であることも主張した。
結果、当方の勝訴的和解が成立した。
4.弁護士のコメント
親が高齢になると、お金の管理ができなくなり、同居の親族にキャッシュカードの暗証番号を教えて代わりに管理してもらうということはよくあります。
管理を任された親族が、親の日々の生活費や病院代の支払いに充てるのであれば問題ありませんが、遺産を多く取得しようと、経費以上の額を親の口座から引き出してしまうという例があります。
内緒で引き出したつもりでも、他の相続人は銀行から入出金の履歴を開示してもらうことができますので、お金の動きはばれてしまいます。
「親の預金の額が少ない」など、不審な点があれば、銀行から履歴を取り寄せて確認するか、場合によっては弁護士に相談に行くことをお勧めします。
また、お金を引き出した親族が、本当は親の経費の支払いに充てたのに、領収書などをきちんと保管していないと、親の死亡後に、他の相続人から疑われてしまう場合もありますので、領収書はきちんと保管しておきましょう。
税務署が経費として認めてくれず、税金が課されてしまうなどのリスクもあります。
場合によっては、親名義のままお金を引き出すのではなく、親と財産管理契約を結んだり、家族信託の制度を利用したりすると良いでしょう。
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